防災テック・気候テック スタートアップカンファレンス

EVENT REPORT

防災テック・気候テック
スタートアップカンファレンス レポート

2023年開催のレポート

世界をリードする防災・気候テック実現に向けた
スタートアップの最前線の取り組みと
未来への展望に迫る

2021年、2022 年とオンラインで開催されてきた「防災テック・スタートアップ・カンファレンス」。3年目を迎える2023年は、「防災テック・気候テック スタートアップカンファレンス」とイベント名を改め、気候分野でイノベーションを追求しているスタートアップ企業を交えて開催されました。
今年も防災・危機管理そして気候変動を抑えるためにテクノロジーでイノベーションを起こすことにフォーカスしたスタートアップ5社のセミナーを実施。そのほか、防災領域における戦略・策定・推進のスペシャリストである株式会社NTTデータの中村 秀行氏や、気象の専門家である東京大学未来ビジョン研究センターの江守 正多氏をゲストスピーカーにお招きし、防災・気候それぞれの専門的な視点から持続可能な未来をつくるための課題についてお話いただきました。

「防災テクノロジー・気候テクノロジーの未来」とは?

災害大国・日本で、多くの防災テック・気候テック分野のスタートアップが立ち上がっている今。未来に向けてたゆまぬイノベーションを続けている、スタートアップの最前線の取り組みや未来への展望などを順にレポートしていきます。

GUEST SPEAKER

株式会社NTTデータ

第一公共事業本部 モビリティ&レジリエンス事業部 統括部長

中村 秀之 氏

TITLEハイレジリエントな未来を共創するNTTデータの防災DX

中村 秀之

自治体・企業・個人など全てのステークホルダーの災害対応力を向上するための3つのポイントとして、「組織の垣根を超えてつながること」「集まる情報を最大限活用すること」「変化する社会に適応すること」を掲げている「株式会社NTTデータ」。ハイレジリエントな未来を実現するためには、共創が必要不可欠。組織の垣根を越えてつながる社会の実現を目指し、イベントに参加するスタートアップに向け、積極的に交流を図ろうとしていることが印象的でした。スタートアップと互いに強みを出し合いながら、日本から海外へ防災市場の展開を進めていきたいとも語られていました。

SEMINAR

株式会社Spectee(スペクティ)

代表取締役 CEO

村上 健治郎 氏

TITLEAIで予測・可視化する危機管理サービス『Spectee Pro』で実現する 防災・BCPの最前線

村上健治郎

AIで災害情報をリアルタイムで覚知・予測する危機管理サービス「Spectee Pro」を提供する「スペクティ」。異常気象による自然災害や、工場火災、物流障害、停電など世界的に発生している危機を可視化・予測の2つの観点から情報を提供されているベンチャーです。現在は製造業・物流などのサプライチェーンや小売・不動産・住宅、建設・インフラ事業者、金融・保険の4つ領域での活用が特に進んでおり、グローバルにサプライチェーンを展開する製造業や全国に店舗展開する小売りチェーン、住宅メーカーなどの災害対応など、さまざまなシーンで活用が進んでいるとのこと。今後は予測技術にさらに磨きをかけるという、「スペクティ」の新たな展開に期待が高まります。

SEMINAR

株式会社Laspy(ラスピー)

代表取締役

藪原 拓人 氏

TITLE防災備蓄を各企業で個別管理する時代はもう終わり。
防災備蓄はビル単位・エリア単位で保有する時代へ

藪原拓人

防災備蓄の非効率を解消するため、建物やエリア単位での効率的な備蓄管理ソリューションを提供している「株式会社Laspy」。現在は第一生命や安田不動産、その他デベロッパーと協業し、防災備蓄管理DX&不動産付帯型防災サービス「あんしんストック」の導入のさらなる拡大を図っています。また5年保存が主流だったところ10年保存できるLaspyオリジナル保存食品「&mogu」を開発。圧倒的なコスト削減を実現し、今後さらにラインナップの拡充を目指しているとのこと。新しい防火都市、インフラのあり方を提示いただきました。

SEMINAR

WOTA株式会社(ウォータ)

執行役員 兼 インキュベーション統括バイスプレジデント

山田 諒 氏

TITLE災害時、誰も水に困らない風景をつくる
〜「小規模分散型水循環システム」で世界の水問題を解決する〜

山田諒

水問題を構造から捉え、解決に挑むスタートアップ「WOTA株式会社」。断水した災害時などにシャワーや手洗いとして利用できる可搬型水再生プラント「WOTA BOX」のほか、水インフラの老朽化・人口減少による財政課題に直面している自治体が従来インフラの代替として活用できる「住宅向け小規模分散型水循環システム」を紹介いただきました。気候変動により年々降雨量が減り、水不足に陥っているカリブ海の島国にシステムを活用するなど、海外でも事業展開されている事例に他のスタートアップからも注目が集まっていました。

GUEST SPEAKER

東京大学

未来ビジョン研究センター 教授/国立環境研究所 上級主席研究員

江守 正多 氏

TITLE気候の危機にどう向き合うかーIPCC第6次評価報告書のメッセージとテックへの期待

江守正多

地球温暖化問題の国連の報告書「IPCC」の中から気候変動の現状と見通しについて話されたのは、東京大学・未来ビジョン研究センターの江守 正多氏。気候リスクが低く公正で持続可能な世界をつくるためには、温室効果ガスの排出削減、気候変動の影響の適応を含む気候レジリエントな開発が必要であることを強調。気候変動問題解決のカギは社会変革にあると語り、「社会変革の理念を実現する志を持ったテックに期待したい」と締めくくられました。

SEMINAR

RainTech株式会社(レインテック)

代表取締役

藤井 聡史 氏

TITLE地域の固有性に応じた気象状況・災害リスクの
正確な可視化と緻密なデータ蓄積による予測の可能性

藤井聡史

「“雨の非常ベル”となって必要な情報を必要な人へ届ける」ことをミッションに掲げ、異常降雨による被災の低減を目指す防災ベンチャー「RainTech株式会社」。自分に降りかかるリスクを映像・水位・雨量情報を一元で可視化させるソリューション開発・システムを構築しています。「降雨量予測の高精度化プロジェクト」と題して、気象庁が発表しているデータと独自の実測データを組み合わせた新予測モデルを立命館大学と共同で開発中。将来的には地域とデータを拡張してデータの蓄積を進めて、社会実装を目指していると語られました。

SEMINAR

アスエネ株式会社

執行役員 CFAO

衛藤 和也 氏

TITLE企業のサプライチェーンCO2排出量見える化と削減による脱炭素経営

衛藤和也

世界中で喫緊の課題となっている気候変動問題を解決するために、CO2見える化・削減・報告クラウド「アスエネ」、サプライチェーン調達のためのESG評価クラウド「アスエネESG」、カーボンクレジット・排出権取引所「Carbon EX」など、脱炭素・ESG領域のマルチプロダクトを提供する「アスエネ株式会社」。現在、「アスエネ」の導入社数は4,000社を突破しており、企業の脱炭素経営の取り組みを支援しています。日本や世界でグリーンテクノロジーを活用した事業を展開することで、カーボンニュートラル社会の実現に向けて挑戦しています。

TALK SESSION

気候変動や災害にスタートアップがどう立ち向かうか?

スタートアップ5社が一堂に介し、トークセッションを行いました。冒頭はそれぞれのスタートアップに5社の中で気になるスタートアップを挙げ「災害状況を予測する弊社と、避難先の備蓄を提供する株式会社Laspyとの共創には新しい可能性があると思う(株式会社スペクティ・村上氏)」や「海外進出をしているWOTA株式会社と弊社の連携により、グローバルに気候変動対策を推進できることに魅力を感じている(アスエネ株式会社・衛藤氏)」など、将来的に共創につながるようなお話があがりました。
また「スタートアップは“J-Startup Impact”など国から支援されている証があると海外での活動の後押しになる(WOTA株式会社・山田氏)」など海外へ進出するための意見交換も。トークセッションの締めくくりにはどのようにこれからの気候変動や災害に立ち向かっていくか、 各社それぞれの考えが述べられました。「防災・気候の領域が日本初のスタートアップが世界で戦える領域、ビジネスチャンスである」とも語られ、防災テック・気候テックのスタートアップの進化への期待がさらに高まりました。

日本の防災・気候テックが世界をリードする未来の実現のために
企業・自治体・研究機関と共創しながら領域を広げていく

日本が世界をリードするために必要なことは、スタートアップのサービスを最大限に発揮すること。そのためには大手企業、官公庁、自治体、研究機関とともに共創していくことが、必要不可欠であるとさまざまな登壇者の方が語られていたのが印象的でした。競争ではなく共創しながら、防災・気候分野のビジネス領域を広げていくスタートアップの今後も目が離せません。